赤潮とは、海のプランクトン性の生物が増殖し、その結果海水が着色する現象です。 宇和海で赤潮を形成するプランクトンには珪藻類、渦鞭毛藻類、ラフィド藻類などがありますが、一口に赤潮と言っても被害を与える有害なものもあれば全く問題のないものもあります。 珪藻類はキートセロス属・レプトシリンダラス属・スケレトネーマ属・シュードニッチア属などが代表的な種類ですが、珪藻類が赤潮になっても養殖魚貝類への悪影響は殆どありませんし、珪藻類を餌にしているアコヤ貝にとっては、「赤潮になる位に珪藻類が増殖した方が良好な餌料環境が形成される」として、宇和海では歓迎されます。 渦鞭毛藻類にはギムノディニウム(カレニア)属やゴニオラックス・ポリグランマなど養殖魚介類に被害を与える種類のほか、ギムノディニウム・カテナータムやアレキサンドリウム・カテネラなど二枚貝を毒化させる種類があります。ラフィド藻類にもシャットネラ属やヘテロシグマ・アカシオなどが養殖魚に被害を与えることがあります。 以下に宇和海で過去に赤潮を形成したり今後形成する可能性のあるプランクトンについて、写真を掲載します。なお、有害プランクトンの代表種であるギムノディウニウム・ミキモトイについては、カレニア属への転属が提唱されており、カレニア・ミキモトイと記述する研究者が多くなっておりますが、漁業者の間ではギムノディニウムが有害プランクトンの代表種として広く認識されていることから、愛媛県水産試験場では今しばらくはカレニア(ギムノディニウム)・ミキモトイと記述することとしています。 |
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| [有害プランクトン] ☆渦鞭毛藻類 |
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| カレニア(ギムノディニウム)・ミキモトイ (80年代に多発。) ![]() |
ゴニオラックス・ポリグランマ (94年夏季に長期間発生し、漁業被害を与える) ![]() |
| コクロディニウム・ポリクリコイデス(2002年以降毎年発生) | |
| 16細胞連鎖個体 | 単独個体 |
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| ☆ラフィド藻類 | |
| ヘテロシグマ・アカシオ (春季〜初夏に赤潮を形成する有害種) |
フィブロカプサ・ジャポニカ (単独での赤潮形成事例はありません) |
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| [麻痺性貝毒原因プランクトン] ☆渦鞭毛藻類 |
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アレキサンドリウム・カテネラ (春季の二枚貝毒化原因種) ![]() |
ギムノディニウム・カテナータム (主として冬季の二枚貝毒化原因種) ![]() |
| [その他のプランクトン] ☆珪藻類(アコヤ貝の餌になります) |
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キートセロス ![]() |
スケレトネーマ ![]() |
レプトシリンダラス![]() |
シュードニッチア![]() |
| ☆渦鞭毛藻類(被害は殆どありません) | |
プロロセントラム・デンタタム![]() |
ケラチウム・フルカ![]() |
ノクチルカ・シンティランス(夜光虫)![]() |
夜光虫の赤潮発生状況![]() |
ケラチウム・フスス![]() |
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さて、赤潮はどのような時に発生するのでしょうか。 過去の発生状況から、珪藻類はしばしば初春や初秋に増殖し、渦鞭毛藻類などの有害な赤潮は夏季の高水温時に発生しやすい傾向が見られます。しかし夏季なら必ず有害な赤潮が発生するという訳ではなく、その時々の漁場環境や天候などとも密接に関わっているようです。 宇和海では主に春から秋にかけての小潮時に急潮という黒潮起源の暖水塊が侵入する現象があり、この急潮が豊後水道の基礎生産の維持やプランクトン(特に珪藻類)の増殖に重要な役割を果たしていることが判っております。 急潮が入るとプランクトンは湾外に押し出され、湾内のプランクトン量は一旦減少します。急潮は黒潮由来なので栄養塩が少なく湾内の栄養塩も一旦減少します。その後、底入り潮(そこいりじお)と呼ばれる栄養塩の豊富な冷たい水が底層から入り、珪藻類が増殖することが確認されています。これは急潮によって透明度が上昇し、光が海底まで届くことによって底泥中の珪藻類の種(たね)が発芽し、底入り潮で供給された栄養塩を吸収して増殖するためです。 もし急潮後に底入り潮が入らない場合、栄養塩の補給が絶たれるため珪藻類はなかなか増殖できず、その間に赤潮を形成する渦鞭毛藻類が増殖してしまいます。宇和海で渦鞭毛藻類が増殖するメカニズムはまだ十分解明されていませんが、珪藻類も渦鞭毛藻類も海水中の栄養塩類を吸収して増殖しますので、栄養塩類をめぐって両者は競合する関係にあり、その時々の環境条件の違いによって優占するプランクトンの種類が替わるものと考えられます。 水産試験場では春から秋にかけて定期的に宇和海の各湾の採水を行い、顕微鏡でプランクトンの出現状況を確認するとともに、急潮や底入り潮の発生状況について注意深く観測を行っています。 注意しなければならない渦鞭毛藻類などの増殖が見られるようになれば、赤潮情報として関係漁業協同組合を通じて漁業者の皆さんにお知らせすることとしており、このホームページでも随時お知らせしてまいります。 急潮や豊後水道の基礎生産のメカニズムなどについて興味をお持ちの方は、下記の愛媛大学沿岸環境科学研究センター(CMES)のページをご覧ください。 「瀬戸内海の魚介類を育む海の仕組み」世界の閉鎖性海域の基礎生産の比較豊後水道の基礎生産のメカニズム |
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