凡農近況
著/大野富衛・吉田八曽八
A5判 上製本 242頁
作品紹介
長岡市在住で、農業を営む著者とその伯父の共著本。共に長岡ペンクラブ会員。著者は、第1エッセイ集「こぼれだね」に次ぐ第2エッセイ集。第1集を出してから8年、「いまあまたの恩人に私が生きている近況をお礼として報告せねばならん」と思って書いたという。
わたしの出版体験記
私が自分の本を作ろうと考えたのは、60歳頃の時だった。生来身辺の整理ごとにうとく、気がついたら前に書いた原稿や掲載誌が散乱していて甚だ見苦しい。これでは困る、一冊の本にまとめてしまおうとなったのである。こうして初出版「こぼれだね」(※註1)も数編の短編を書き加えて、250ページほどの本が600部出来た。
それから7年ほど経ったら、またかなりのかきものが貯まってしまったが、若干まだ原稿の量が足りない、どうしたものかと思案したが、ふと十歳年上の叔父さん(註2)が戦事体験記を書いていたことを思い出し、共著の相談に行ったら「ぜひに…」とのこと。その60ページほどを加えて一冊となった。
たまたま私が前からお世話になっていた小国の高橋先生が下さった退職の挨拶状に「ブックアドバイザーの仕事に就く」とあったので、氏の再出発を祝したいと、ためらわず出版依頼の電話を入れた。やがてとても立派に仕上がった500部が届いた。叔父さんも大層喜んで下さった。
本は私が350部、叔父さんが150部を親戚・友人・知人・集落の家々などにそれぞれ配り、今残部はない。私はものを書くに特別の意識や目的を持たない。エッセイにしろ創作にしろ、日常身辺のこと、忘れ難きことを忘れまいとすることだけで、奇は好まない。自分の生きようを、ごく素直に発表する心で書いている。このたびの本の題名「凡農近況」が、そのままの私の覚悟である。本を配ってのち、沢山の反響、感想を耳にした。どれもとても自分の生きた勉強になった。
人間は喋る言葉で残すことは不可能に近いと思う。書いて発表することは、自分の生きようの検証であり、この先の出発のスタートであると思っている。何年かしたらまた次の本を作りたいとも願っている。
(註1)「こぼれだね」越書房(新潟市)1993年刊
(註2)吉田八曽八(よしだやそはち)、若いとき6年間を中支戦線で死線を越えた戦記を、長岡ペンクラブ誌に連載す。2005年逝去。