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未読山脈の片隅より2002(5月後半)
さて今月の未読消化本は如何に?
題名:幻惑と死と使途
作者:森博嗣
発行:講談社文庫 2000/11/15初版 2001/4/27第2刷
初出:1997/10講談社ノベルズ刊
ISBN:4062730111
価格:762円+税
森博嗣の犀川&萌絵シリーズをずんずん読み進めている。新本格系というジャンルは私はどっちかというと敬遠してたのだけど、いざ、読みだしてみると結構はまってしまってしまっていたりして。なんといえばいいのかなあ、そうそう、学生時代に少女漫画のコミックをマトメ読みしてたような、あんな感覚です。
引きこもり予備軍のデフォルメされた、社会適応失格者一歩手前、それが犀川助教授だと思う。大学という、ともすれば世間と隔絶された空間、そこで(それこそ新聞やTVも見ずに過ごせば)いい意味仙人、通常は世間知らずの堅物を作り出すのはそんなに難しいことではない。本来生きてゆくためのコミュニケーションを嫌い、わずらわしい上下の人間関係を嫌い、メールやチャットでの情報交換ですべて済ませてしまう(もしくは済ませたと思いこんでる)、そんな人種への歪んだ憧れが、今の、コミュニケーションエラーをおこした若いモンにウケるかもしれない。現実的には、なにもかもを面倒くさがり「結婚しないかもしれない症候群」直行の困ったチャンだが、そこはフィクション、、これまた現実離れした大富豪の美少女、萌絵に付きまとわれるのだから、まさに少女コミックの王道を行くプロット、ついつい先を読まされてしまうアザトい(笑)恋愛ロジックで構築された作品なのだ!(と個人的には思うのよ)。
内容に関しては、新本格だしー、どう紹介してもネタバレに抵触するので書けません(爆)。まま、簡単にいうと「死体移動トリック&【すりかわりトリック】」(さらに日テレ引田天功2時間特番世代にはタマラん趣向ですっ!)。建築科の大学助教授犀川創平と大富豪の娘・西之園萌絵コンビのシリーズ物第七弾です。
しかし、なにものも超越していると思っていた、犀川&萌絵のプラトニック・ラブコンビにも、なにやら二人の間に感情の揺らぎみたいなものも見え隠れして、この先の、興味を煽ってくれるなあ〜、と関心することしきりですわ(喜)(2001/5/18記)
【蛇足】それにしても、この推理パズルの【偶数章】はいったいどういうネタふりなのかしらん?
題名:詩的私的ジャック
作者:森博嗣
発行:講談社文庫 1999/11/15初版 2000/12/1第4刷
初出:1997/1講談社ノベルズ刊
ISBN:4062647060
価格:695円+税
やっぱりシリーズは順番に読まないとだめだねー。作中のトリックには全然関係ないけれど実はこの作品の中での萌絵の【貧血】が続編「封印再度」でのネタふりになってるんだよねー。あと、いままで読んだシリーズの中では、一番キャラクターのキャラクターらしさが出てて新本格系としては意外に「物語」らしくなってるというか。しかし、それも結局は(新本格系としては)、このあと何巻か続く犀川&萌絵シリーズの構成には必要なロジックなわけで、ようするに長周期で仕組まれた仕掛けとして作用するネタでしかありえないわけなんだけれど・・・・(推理パズルとしては)。あと長周期の仕掛けの前フリというか(この「詩的私的ジャック」は)、森パズルの特徴というか「概念」が一番キャラクターの言葉を多く借りて説明されている作品だと思いますね(夢であるとか希望であるとか仕事であるとか趣味であるとか?なにがどう違う、という抽象的な質問についてそれぞれが独自の視点で回答してる。そういうところがね)。
内容に関しては、新本格だしー、どう紹介してもネタバレに抵触するので書けません(爆)。まま、簡単にいうと「死体移動トリック&【すりかわりトリック】」N大出身のロック歌手にかかわる大学内での殺人事件です。(あと【モーホ】」がトリック成立に深くかかわってくるのですよね。)建築科の大学助教授犀川創平と大富豪の娘・西之園萌絵コンビのシリーズ物第四弾です。
そうそう、この作品の中で萌絵が犀川に酔った勢いで【コクっちゃってる】んですが、これも続編「封印再度」の遠回しなネタふりになってたりして(笑)(2002/5/19記)
題名:夏のレプリカ
作者:森博嗣
発行:講談社文庫 2000/11/15初版 2001/10/30第4刷
初出:1998/1講談社ノベルズ刊
ISBN:406273012X
価格:733円+税
「幻惑と死と使途」の偶数章に当たる部分で独立した作品となっている。・・・とはいってもわざわざ奇数・偶数(だって理系新本格なんだもんね)分けてあるのだからきっと!2作品にまたがる謎があるに違いない、と思って読みはじめたのだけど、いやー、またまた、やられました。【なんと2作品にはまったく相関がない!!、というトリックでした〜(そうきたか!)。その上、今回は新本格というよりはサスペンスミステリという意趣変えトリックのオマケつきだ(って「意趣変え」はトリックぢゃないよね?(笑))】
新本格として読むには無理がある。でも新本格ぢゃないと意味がない、そういう状況で、「じゃあ新本格ってなんだろか?」って感じの作品だったような気がする。らしくない、というか森ミステリ(ィ)としては異質な作品だったような・・・。
まま、「頑なに帰郷を避けていた一人の女性が、久しぶりに帰る生まれ故郷での一夏の出来事。真実の直視から逃れのがれて。傷つくことに不器用だった少女が一人の女性として現実と対峙したとき、起こるべくして起こった悲劇!」って感じかな。【多重人格的な設定が犯人を特定するキーワードってのは、かなり強引な気がするし、推理パズルのとしての体裁を新本格系として一応守らなきゃならない立場にある状況ではこの手の作品を萌絵&犀川シリーズとしてリリースするの反則では、という気がする。】」。結局、サイコ・スリラーな雰囲気は、さすがに謎解きパズルの萌絵&犀川シリーズにはそぐわない。面白い面白くないは別として、シリーズとしてはかなりミスマッチな印象を受けました。(2002/5/23)
題名:都立水商
作者:室積光
発行:小学館 2001/11/10初版 2002/1/10第2刷
ISBN:4093860793
価格:1300円+税
「水商売のイロハを教える高等学校があったなら?」そういう一発ギャグ的なばかばかしい発想がすべての物語。そもそも、水商売の極意など、世の中の酸いも甘いも知り尽くし、信じることにも信じられることにも擦り切れてしまった、くたびれた人たちだけが仕方なしに悟る人生のはず。なのに、さわやかに青春しながら「勉強」する「水商売」なんて・・・所詮ゴッコでしかないと思う。まま、ゴッコだからこそ、ありえないバカ話しと割り切れるのであって、なにも考えずにサクサク読めるし、それで読んでて面白かったなあ、と思えるのだと感じる。むしろ「ばかばかしいものだから」っていう開き直りこそ、おもしろおかしく生きてくために必要なのかもしれない。あっけらかんとカラリと突き抜けてるから、深刻にならずに運命を乗り切れる。
そういう生き方こそ、自分のチカラでハッピーエンドを手繰り寄せることが出来るのかもね。(2002/5/25記)
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