特 集 福利厚生費と近隣経費の税務

1、福利厚生費の範囲

 福利厚生費とは、役員または従業員の福利厚生のために支出する費用をいい、その支出の形態は、 法定福利費、厚生費、レクレーション等の行事費、厚生施設負担額および現物給与などがありますが、 これらの費用は、当然に会社の経費として損金算入が認められています。

 ところで、社内の行事に際して支出する金額等で次のようなものは福利厚生費の性格を有するも のとされ、交際費等ではないと租税特別措置法(法人税関係)通達で明らかにされています。      

@ 創立記念日、国民の祝い日、新社屋の落成式等に際して従業員におおむね一律に社内において供 与する通常の飲食の費用

A 従業員またはその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品の費用     

福利厚生費として認められるのは、「専ら従業員の福利厚生のために」行わ れるものにかかる費用 であり、社会通念上これにふさわしい内容と「通常要する費用」の範囲内のも のが、これにあてはまる ものとされています。        

まず、「専ら従業員の福利厚生のために」ということは、 役員を除くということではなく

例えば一定以上の役職者だけを対象とした新年会、忘年会、慰安旅行などは福利厚生費となるレク レーションに該当せず、幹部だけの親睦を目的としたものとして交際費となり ます。      

 また、役員だけを対象とした慰安旅行などは、その役員に与えた経済的 利益として役員賞与〈会 社の損金不算入を原則〉となる場合もあります。     

 従業員を対象とするレクレーションは、必ずしも全従業員に対して同じ時期に同じ方法で行われ るとは限りませんが、全従業員が例えばその所属する部課の催しに参加する機会が与えられておればよ く、各部課ごとの業務慰労会が専らその部課に属する全従業員を対象としたものであれば、福利厚生費 となります。      

 次に、「通常要する費用」の程度は社会通念上の常識で判断すべきで、専ら従業員を対象として いても、例えば料亭で豪華な遊興をする場合の費用とか、忘年会等でもいわゆる二次会以降の費用は「 通常要する費用」の範囲を超えるものとして、交際費になります。  

2、具体的取扱い              

会社の行事等で支出する費用のうち、福利厚生費となるか、給与または交際費となるかについての具体例      

(1) レクレーション        
(福利厚生費となるもの)   (給与となるもの)   (交際費となるもの)    
 社会通念上一般に行われている  @役員だけのもの     特定の社員のみを対象            
と認められるレクレーションで通  A特定の社員のみを対象  とするもので給与以外
常要する費用           B自己都合の不参加者に  のもの
                  金銭を支給した場合に      
                  は、参加者を含め全員     
                  が給与課税                 

(2) 慰安旅行               
 旅行期間が4泊5日以内でかつ  レクレーションの場合と  上記と同じ                
全従業員の50%以上が参加する  同様@〜Bが給与課税
場合〈費用の総額の限度は明示さ      
れていませんが、審判例では10      
万前後では問題外としても、20
万円程度でも高額費用として否認     
を受けています。)(平成10、6)                

(3) 福利厚生施設の利用              
 原則として認められる。     @役員のみを利用の対象   ゴルフクラブ施設を  
福利厚生施設には、理美容室、保   とするもの        得意先等の接待用に
養所、診療所、体育施設、レジャー A利用実績等を確認しない  利用した場合
施設等(契約施設を含む)等     もの
                 B現金支給のもの      
                 Cゴルフクラブのプレー代       

(4) 創立記念新社屋落成パーテイ等        
 従業員におおむね一律に社内に   記念品としてふさわしい   得意先等を招待し 
おいて供与する通常飲食に要する  もので、かつ、価額が1万  た場合には、招待に
費用               円以下のものは非課税    要した費用(式典の
                               祭事費用をのぞく)

(5) 永年勤続費用      
 次の条件をみたす場合       現金支給は給与となります             
@記念品の支給、旅行、観劇など         
 への招待             
A贈られた価値の額が勤続年数な              
どに照らし社会通念上相当なもの          
B勤続10年以上の者を対象とし                      
 以後おおむね5年以上の間隔を         
 おいて行われるもの        

(6) 慶弔費                        
 規則等一定の基準にしたがって支給  役員または成績優秀等の 社会通念上高額な        
する金品(内規等の範囲内であっても  理由のみでの割増支給は 慶弔費、社外に対            
社会通念上相当な額を超える場合には  割増分が給与課税    するものは交際費
交際費または給与となる場合がありま    
す)                   

(7) 忘年会、新年会               
 全職員を対象とし、内容、金額とも  役員または特定の社員の 特定の社員等のみ
相当なもの(常識的なもの)ただし、  みを対象とするもので明 を対象とするもの
一次会のみ              らかに給与とすべきもの で給与以外のもの
                              (例えば、二次会、
                               三次会費用、高額
                               費用等)

3、会議費との区分

 福利厚生費、交際費に似た費用として会議費があります。

会議費とは、会議に関連して社会的な礼儀から、茶菓・弁当などの飲食物を供与する費用をいいま す。
会議に際して社内または通常会議を行う場所において、通常供与される昼食の程度を超えない飲食 物などの接待に要する費用もこの会議費に含まれます。
会議費の昼食程度の金額とは、一応の目安として3,000円程度までと、よく言われております が、金額を定めた法令は見当たりません。

要するに、一応の目安として、食堂やレストランで会議・打ち合わせをしながら、またはその終了 後、ビール1本程度の酒類を伴ってもかまわないという趣旨で、高級レストランやスナック・クラブで の会議費までは想定していないものと考えます。

社内会議室に「出前」をとり、紅茶・コーヒー等で商談を行った場合は「OK」、料亭・ホテルを予 約して会議を行った場合は直ちに「NO」ということではありませんが、通常の会議費用をはるかに超 えることが予想されるため、無理だろうと思われます。

例えば、一人当たり会議費用が10,000円かかり(領収書同額)一人当たり7,000円を出 席者本人から分担金を徴収して、会議費の会社負担を3,000円としても、会議の実態が10,00 0円(領収書同額)なので、その全額が交際費の判定となります。

4、福利厚生費と残業・宿日直に伴い支給する食事費用の取扱い

所得税法基本通達36〜24(課税しない経済的利益……残業又は宿日直をした者に支給する食事)

 原文…使用者が、残業または宿直若しくは日直をした者(その者の通常の時間外における勤務として これらの勤務を行った者に限る。)に対し、これらの勤務をすることにより支給する食事については、 課税しなくて差し支えない。

所得税法基本通達36〜38の2(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)

原文…使用者が役員又は使用人に対し支給した食事(36〜24の食事を除く。)につき当該役員 又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36〜38により評価した当該食事の価額の50%相 当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする 。
ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円 を超えるときは、この限りでない。

(残業の際に支給する食事の考え方)

 使用者が、例えば、9時から17時までを正規の勤務時間とする者に対し、20時まで時間外勤 務(いわゆる残業)をさせた場合に支給するときの食事は、実費弁償の観点から支給するものである点 を考慮し、課税しなくて差し支えないこととされています。

食事代は原則現物支給で、現金支給をしますと全額給与課税となります。

食事代の金額の限度が気になりますが、特に税法上は定めがなく社会通念上(常識的な額)相当な額 であればよく、会社の都合で残業して支給されるものであり、食事代も一人当たり3,000円程度ま では、福利厚生費として認められてよい筈であるとの意見を実務家からよくききます。

ただし、この場合も、食費の領収書が8,000円で本人負担が5,000円、会社負担額3,0 00円の場合は、本体が通常の残業食事代の額をかなり超えているので非課税とされる福利厚生費処理 は無理のようです・

遠距離出張の多い場合に支給する食事の考え方)

出張旅費規程を作成し、これを有効に活かす方法が他社で多く利用されています。 

所得税法第9条第1項第4号(非課税所得)、所得税法基本通達9〜3(非課税とされる旅費の範 囲)、の規定を活用して、非課税とされる旅費、(運賃、宿泊料、食費、日当) は実費弁償にかえて、

@ その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人のすべてを通じて適正なバランスが保 たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

A その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給してい る金額に照らして相当と認められるものであるかによる。

これにより、実費精算ではなく、「旅費日当規程」を作成して、それにより支給されることとなり ます。

担当 下平 功明