はじめに

「お灸は熱い〜!」「灸をすえる(懲らしめる)」「お灸は古くさい」などネガテイブなイメージがありますが、お灸の歴史は紀元前まで遡るほど古くから行われており、また、だれでも簡単にご家庭でできて効果のある健康法のひとつです。

お灸の方法もさまざまありますが、ここではたいへん気持ちの良い温灸(おんきゅう)法を紹介します。日本では江戸時代にお灸は民間療法としてたいへん盛んに行われおり、浮世絵・俳句・川柳にもお灸にまつわるものも多く見られ、その当時の様子を伺うことができます。

隠れ家や猫にもすえる二日灸  一茶
二日灸酒飲む膚の美しき     虚子
ありし日の母のごとくに寒灸   不逸

幼少の頃、私の祖母もよく背中にお灸をすえていた記憶があります。昔は今のように、いろいろと薬もなく、よほどのことがない限り医者にかかることもなかったようですが、医食同源といわれるように食事・民間薬、養生法などの知恵が生活の中に自然と取り入れられていたように思います。

日本人は風土や生活様式から脾胃(東洋医学では直接脾臓や胃を指すのではなく、消化器系の機能という意味に近い)が弱いと云われます。それ故、脾胃を傷つける寒湿(寒さや湿気、冷たい食べ物や生もの)を避けることが賢明です。温泉もいいですし、お灸も養生法としてはもってこいです。

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艾(もぐさ)について

もぐさは何からできているのでしょう。

もぐさは蓬(よもぎ)の葉の裏側の灰白色の柔毛から作られます。よもぎはキク科の多年草で、町中の道ばたにもみることができますし、草餅にも入っていますのでたいへん私たちに身近な植物です。古来、中国ではよもぎの他にも幾つかの植物が使われていたようですが、よもぎの燃焼温度や成分、手に入りやすさなどの諸条件により灸にはよもぎを使うようになったようです。

よもぎの成分にはチオネールという精油が含まれており、燃えると煙と共に独特の芳香が漂います。まさに自然のアロマテラピー、リラックス効果も抜群です。生の葉には止血・消炎・解熱・利尿・防腐・鎮痛などの薬効もあります。
昔は、この匂いが魔よけとして用いられていたようですが...

日本の産地は伊吹山(滋賀県)や標茅原(栃木県)が有名です。灸法によってもぐさも使い分けるのですが、下の写真のように夾雑物が少なく淡黄白色で手触りの良いものを良質とします。温灸用はそれほど良いもぐさでなくても大丈夫です。

*上質もぐさ

*温灸用もぐさ