アイ・サポート研究所 【セミナー・講座・研究会】

LLブックを進める
日付:2008年2月17日 場所:大阪市立中央図書館

[ 報 告 ]
 LLブックのLLとはスウェーデン語で「やさしく読める」という意味。この「LLブックをすすめる」というシンポジウムは知的障害・自閉症児者のための読書活動を進める会が主催となり2006年7月 ブロール・トロンバッケ氏(スウェーデンのLLセンター所長・元IFLA障害者サービス分科会常任委員)の講演会を皮切りに今回で3回目となる。この会は「だれもがみんな読書を楽しみたい。知的障害や自閉症、読み書き障害、失語症などがあっても願いはいっしょ」を合言葉に絵記号を使った分かりやすい本の刊行、マルティメディアDAISY図書の研究等を行なっている。
 当日は用意された140部の資料が無くなるほどの参加を得、年を重ねる毎にテーマへの関心が増えてきているとの実感を得た。



    

 会員の吉田くすほみ氏のあいさつの後、同じく会員の藤沢和子氏より「知的障害者のためのマルティメディアDAISY図書」、そして服部敦司氏より「近畿視覚障害者情報サービス研究協議会 LLブック特別研究グループの活動」〜視覚障害者サービスの実績とノウハウを学習障害者や知的障害者へのサービスへ〜というテーマでの活動報告がされた。
 それぞれの職場で実際に障害のある人へのLLブックを使っての取り組みや図書館で作成されたブックリスト等が紹介された。



 今回の講演は野沢和弘氏による「知的障害者とコミュニケーション〜『ステージ』編集から〜」だった。
 ステージは知的障害者のための新聞として1996年9月に創刊された。タブロイド版、8ページで年に4回「全日本手をつなぐ育成会」が発行もとである。編集には同会職員、知的障害のある本人、毎日新聞の記者などが携わっている。

  「あまり福祉っぽくないものにしたい」「抽象的な概念や論理は苦手だが、普通の大人と同じように政治にも経済にも事件にも興味がある。もちろん恋愛や結婚や性への関心だって強い。知的障害があるからと言って子ども扱いはやめてほしい」という支援者からの要望に応えるべく、自らがステージの編集をするにあたり新聞記事をいかにわかりやすくするか等を具体的にお話しいただいた。
 また障害のある本人との協同作業の中で、こちら側のかかわりで本人たちの表し方が違ってくること、ハンセン病関連の取材において彼らだからこそ引き出せたものがあり感動したという話など、大変興味深い内容だった。




「わたしたちの好きな本、わかりやすい読み物」〜知的障害のある当事者から〜

 当日は岩崎園長が総合司会を務めた。最後は講師やスタッフの方々、全員に壇上にあがっていただき、本人たちの声を中心とした、会場とのディスカッションをこころみた。
 ワークセンタ豊新から3人の利用者が「今どんな本が好きですか」「どんな本が読みたいですか」など職員からのインタビューを受けて発表した。⇒資料1
 ワークセンター豊新では絵本やおはなしの専門家を招き、読書を活動のひとつとして重視してきた。読書そのものにこだわらず本の読み語りや紙芝居、お誕生会の内容に工夫し、様々な角度から本の世界に親しみ、読書体験ができればと模索中だ。また地域の図書館にも出かけ、読みたい本を自分たちで選んでいる。

 今回は一人ひとりが自分の言葉で慣れない壇上からにもかかわらず「こんな本が読みたい」と力強く訴えた。その後、フロアーからの質疑応答が講師の方々につい集中。当事者にとって分かりにくい話が続くことになり、「もっと私たちに質問してください。」と本人からの意見が出された。前回のシンポジウムでも当事者や親の発言が聞いている方にもひしひしと伝わるものがあった。まだ耳慣れない「LLブック」の普及も「知的障害者の読書権」という視点と今回のように当事者が声をあげる、その声を真摯に受け止め、一緒になって考える私たち側の問題ということを気付かされた。
ワークセンター豊新のホームページはこちら

[ 参加された皆さんからの声 ]
●野沢さんの講演について
  • 知的障害があっても、政治・経済などにも興味はあるというのは、本当だなあと思いました。文章の理解力は小学生と同じくらいだと思っていたが、経験が違うというところにハッとさせられました。(教職員)

  • 情報を知的な障害を持つ人にも保障するという発想と姿勢にとても感動し共感を覚えました。全国の養護学校や障害者施設に「ステージ」が置かれ、児童・生徒が新聞を読むことを学べ、それが身につくよう指導できたらいいのにとつくづく思いました。(教職員)

  • これまで子ども達が読みたい本を探してきましたが、新聞ってとてもすごいと改めて思いました。(教職員)

  • 「ステージ」の記事、LLブック、マルチメディアDAISY図書などは、知的障害の人のみならず、失語症の人や高齢の人などいわゆる一般の人たちにもわかり易いものだと思います。「ユニバーサルデザイン」という感じです。(言語聴覚士)

  • 電化製品の使い方など利用者の方に合わせて絵・図入りで作ったりしていましたが、DAISY図書のことなどをもっと勉強して、いろいろな人のニーズに合わせて本を作れたらと思いました。(言語聴覚士)

  • 障がいを持った方が支援者の方の期待に応えようと無理をしているという、野沢さんの話を聞いて、ハッとしました。今までそれに気づいてなかったことを反省しました。(施設職員)

  • 野沢さんは障害を持つ息子さんをお持ちであるということで、子どもさんから学ばれたこともたくさんあったと思う。新聞記事の政治のことなど、日頃わかりにくいと感じているので、ステージのような新聞が、障害者の方だけでなく全ての人にも読まれればいいと思う。(施設職員)

  • 当事者の皆にとっては内容がかなり難しいようでした。一生懸命見てくれていたのでもう少し1つ1つをゆっくりしてもらってもよかったかなぁと思った。(施設職員)

  • 「ステージ」を読みたいと思いました。育成会のメンバーでないので、読む機会がないので、残念です。こういった新聞がどの方にも知る機会ができたらなと思いました。(保護者)

  • 日頃からどういう伝え方がわかりやすいかと思いながら息子と会話をしているのでたいへんおもしろかったです。(保護者)

  • 日常何げなく目を通している新聞記事を本職の方(?)が平易に書き換えるプロセスに、限りない愛情と勇気を感じました。(一般)

  • 知的障害を持ってる僕でも読める、新聞があるんだなぁって初めて知りました。知的障害をけんじょう者の人達により理解してもらえる世の中になって欲しいです。(障害のある人)

  • こんにちは、初めまして。私もコミュニケーションができません!!今日のお話し有難うございました。私も知的障害者です。程度区分3です。「だいすき」のドラマを見ています。ホームページでも見ました。(障害のある人)

●その他の講演等について
  • 今回初めてこの会に参加させて頂きましたが、LLを生徒たちにも紹介したいです。(教職員)

  • 知的障害の方の生の声がきけて良かったです。(教職員)

  • 壇上にあがった当事者らは、自ら発言することに対して誇りを持って話してくれた。会場の方ももちろん本人らのことを考えて、この取り組みが社会に広まることを目指して参加されている方も多いと感じる。しかし、まだまだ本人の訴えというものは社会の方々の心の奥に届きにくい場合もある。本人らの声をきき、感動した、学んだと言ってくれる人もいた。とても嬉しかった。何より本人らが本人らの思いで訴えたことがすばらしかった。(施設職員)

  • 今後、本人たちの“声”をもっともっとDAISYやステージの作成に取入れていくとすばらしいものになると思う。(施設職員)

  • Daisyについて初めて知った。施設で大いに利用できそう。知的障害者への文字情報の必要性に対する認識が薄かったことへ反省させられた。(施設職員)

  • 障害がない人にも本離れをしている人にもLLブックはとても有意義な楽しみ方ができると思いました。(施設職員)

  • この様な活動があることを今回初めて知りました。息子は軽度の知的とLD(学習障害)をあわせもっています。本を読むこと、文をイメージすることが苦手ですが最近本読みレース(本を読むとシールがはれる)に興味があり、あまり意味はわからず文章を目でおって読んでいます。展示されていた本で何冊か本人に見せたいものがありました。リストは大変ありがたいです。(保護者)

  • 点字を通じて視覚障害者への情報提供にかかわっています。「情報」は、伝わってこそ価値あるもの。伝えること、選べることがあたりまえになっていかなければならないと強く感じています。(一般)

  • 僕と同じ障害を持っている人達は、社会でいろいろと頑張っているんだなぁって、すごくかんじました。だから、僕も頑張ります。よくわからないけどきょうみは少しあります。(障害のある人)

  • 貴重なお話を沢山聴けました。当事者の方のお話はよかったと思います。(高校生)

  • 展示の本を見ていましたけど、もうちょっと絵を増やして編集したら、重度の方でも分かりやすく本を読めると思います。障害者条例も、もっと分かりやすくしてほしい。本人の発言のように見やすく、分かりやすい重度の方も読める本を出版してほしいと願ってます。(一般)
※この参加者の声は、原文に基づいて編集しています。

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