センチネルリンパ節とは?

センチネルリンパ節は見張りリンパ節、“前哨リンパ節”などと呼ばれています。すなわち『がん細胞がリンパ流に乗って最初に到達するリンパ節』のことです。したがって、がんのリンパ節転移はまず最初にセンチネルリンパ節におこることになります。乳がんでいえば通常、腋窩(腋の下)リンパ節のどれかがセンチネルリンパ節となります(通常、腋窩(腋の下)リンパ節は10から30個ほどあります)

センチネルリンパ節生検の目的とは?

#1腋窩リンパ節郭清の省略

最近、乳がんの手術においてリンパ節の郭清(切除)を行うことがはたして治療成績の向上に寄与しているか疑問視されるような報告が多く見られるようになりました。これらの報告は乳がんの手術において必須の操作とされている腋窩リンパ節郭清の意義を見直し、郭清手術の施行を改めて検討する必要性があることを示唆しています。つまり乳がんの手術においてセンチネルリンパ節である腋窩リンパ節を同定し、そのリンパ節に乳がんの転移がなければ無意味な腋窩リンパ節郭清を省略できるという考え方です。なぜなら腋窩リンパ節郭清に伴う合併症が一番術後QOLを左右するからです。ただしセンチネルリンパ節にがんの転移があれば、他の腋窩リンパ節にもリンパ節転移がある可能性があるので通常通り、腋窩リンパ節郭清を行います。

#2手術後の合併症の減少、入院期間の短縮、QOLの上昇

腋窩リンパ節郭清に伴う合併症として上肢のむくみ、リンパ液の貯留、運動障害、知覚異常や疼痛を特徴とする神経障害などがあります。腋窩リンパ節郭清を省略できることによりこれらの合併症を防ぐことが出来ます。また腋窩リンパ節郭清を省略することにより手術侵襲を軽減でき入院期間が短縮できます。

センチネルリンパ節生検の最大の目的は、従来では乳がん手術において全員にしていた腋窩(腋の下)リンパ節郭清術を省略できる患者さんを見分けることにより、不必要な腋窩リンパ節郭清術による合併症を減らすことです。


センチネルリンパ節生検の適応

まだ確実なガイドラインが無いため施設間にて若干の違いはありますが
基本的には
@23cm未満の小さいしこり
     
A臨床的に腋窩リンパ節転移を認めない場合
簡単に言うと「腋窩リンパ節に転移を認めないような早期乳がん」が適応です。


どのようにして行うのですか?

#1まず手術中にセンチネルリンパ節リンパ節を同定します。
  a)色素法
  
胃カメラなどで用いられる青色のインジゴカルミンなどの色素を腫瘍周囲の皮下に23箇所投与し、投与部位を包むようにして数分間マッサージを行います。10分後、腋窩部に小切開を加え、脂肪組織内に青染されたリンパ管またはリンパ節を同定する。
  b)アイソトープ法
   手術前日に放射性同位元素を腫瘍周囲に投与しガンマ線検出器であるガンマプローブを用いてセンチネルリンパ節を同定する。
  C) 併用法
   色素法とアイソトープ法を同時に併用する方法。当然、併用法がセンチネルリンパ節同定の確率が高くなります。この方法が現在主流です。

#2 同定されたセンチネルリンパ節にがん細胞の転移があるかどうかを術中迅速病理学的に検索します。
  手術中に同定されたセンチネルリンパ節を摘出しそのリンパ節を直ちに病理医によってがんの転移があるかどうか調べてもらいます。ただし微小転移がなかなか分からない場合も極まれではあるがあり検討の余地を残しています。

#3 腋窩リンパ節郭清の有無
  a)センチネルリンパ節にがんの転移を認めない場合

  そのまま腋窩郭清は行わずに手術を終了する(腋窩温存)。
  b)センチネルリンパ節にがんの転移を認める場合
  通常通り、腋窩郭清を行う。


センチネルリンパ節の問題点

#1 センチネルリンパ節が見つからないことが稀にある。

大変稀ではありますがセンチネルリンパ節が同定できないことがあります。この場合は通常通り、腋窩(腋の下)リンパ節郭清術を行います。

#2、手術中の迅速病理結果と永久病理結果が異なる場合がある。

これは迅速病理診断の難しさと限界を意味します。迅速病理結果でがんの転移は無いと診断されても、術後の最終的な病理診断(永久病理診断)で診断結果が覆ることがあります。通常は手術中に摘出したセンチネルリンパ節(そら豆のようなもの)を真ん中で二つに切ってそのリンパ節の断面でがんの転移が無いかどうか調べます。患者さんは病理検査中も麻酔中のため文字通り、迅速に診断しなければなりません。ただし術後の最終診断時にはたとえばリンパ節を更に詳しく断面を切って調べてみれば一部にがんの転移が認められる場合などが典型例です。稀なことですが実際起こりうることなので、最終病理診断が出るまでは例え迅速病理結果でがんの転移は無いと言う結果が出ても100%安心は出来ません。

#3、センチネルリンパ節陰性と診断されても術後に腋窩(腋の下)リンパ節転移がある場合

このケースも大変稀ですがあります。転移が判明した時点でリンパ節郭清を行っても予後は変わらないと考えられています。ただしこの稀なケースに対する正確な答えは現在、アメリカで行われている大規模な臨床試験の結果を待っているところです。つまりセンチネルリンパ節生検のみで終わった人とリンパ節郭清を行った人の5年生存率を比較する大規模臨床試験です。