| 羊コ | 「兵の声が聞こえます。どうやら、鍾会殿の軍も成都に来られたようですね。」 |
| トウ艾 | 「……囲まれている。」 |
| 羊コ | 「どういうことです?」 |
| トウ艾 | 「気付かんか?この殺気……!」 |
| 羊コ | 「ま、まさか……!」 |
| トウ艾 | 「鍾会はどうやら裏切ったようだ。」 |
| 羊コ | 「な、なぜ……!」 |
| トウ艾 | 「わからんが……戦うしかあるまい。」 |
| 司馬炎 | 「父上、成都から早馬が来ました。鍾会殿が……裏切ったと。」 |
| 司馬昭 | 「鍾会が……そうか。」 |
| 司馬炎 | 「ずいぶんと冷静でおられる。まさか予測されていたのですか?」 |
| 司馬昭 | 「鍾会は自尊心の強い男だ。独立する野望を秘めていても……不思議ではなかった。 ただ、捨ててはおけない。成都に討伐軍を送れ。」 |
| 司馬炎 | 「トウ艾殿は……どうなりましょう。」 |
| 司馬昭 | 「助からないだろう。惜しい男だが……才あるばかりに、功を一人で立てすぎた。 鍾会の野心を加速させたのは他ならぬ、トウ艾自身かもしれないな…… 」 |
| 鍾会 | 「この鍾会が新たな天下を創造する!命が惜しければ降伏するのだ!」 |
| トウ艾 | 「我が戦いの先にあるもの……それが鍾会の裏切りというわけか。 まあ、それも運命というものか……」 |
| 鍾会 | 「トウ艾……!貴様だけは降伏を認めん。この地で朽ち果てるがよいわ!」 |
| トウ艾 | 「そのような気などまるでない。なぜかわかるか?鍾会よ。 ……貴様は私には勝てないからだ。」 |
| 鍾会 | 「この状況でそのような口を利くか!その余裕の態度が気に食わなかった…… ついに、貴様を倒せる日が訪れたことを嬉しく思うわ!」 |
| 鍾会 | 「姜維殿、いかがなされた?浮かぬ顔をしているが。」 |
| 姜維 | 「この戦いが正しいのか……わからなくなってきたのだ。」 |
| 鍾会 | 「姜維殿、貴方の使命とは何だ? 捕らわれた劉禅殿を救い出し、蜀を再興することではなかったのか?」 |
| 姜維 | 「確かに……この姜維、そのことを使命にここまで戦ってきた……!」 |
| 鍾会 | 「ここで貴方が諦めれば……天にいる孔明殿も嘆くであろう。」 |
| 姜維 | 「そうだ……!私は、丞相の遺志を継がねばならない!」 |
| 杜預 | 「羊コ殿!あ、あの鍾会、鍾会の奴が!
独立するだの何だの言い出しやがって……! 反対する奴は斬るとか何とか言って……!やっとの思いでここまで!」 |
| 羊コ | 「少しは落ち着きなさい。あなたの焦躁や怒りもわかりますけど…… 今はどうやってここをしのぐか。どう生き抜くか。それを考えましょう。」 |
| トウ艾 | 「姜維……」 |
| 姜維 | 「トウ艾……!私は……」 |
| トウ艾 | 「何も言わずとも……わかる。もしかすると……お互い死場所を誤ったのかもな。」 |
| 姜維 | 「……私に一つ言えることはこれが我らの最後の戦いだということ……」 |
| トウ艾 | 「そうなるだろうな。姜維よ……決着をつけよう!」 |
| 鍾会 | 「トウ艾よ。死が近づいている心境とはどんなものだ? 絶望を感じているか?それとも実感もわかぬか?」 |
| トウ艾 | 「確かに貴様の言うとおり私は生きて祖国へ戻れないだろう。 だが、己の生も死も念頭に置かず。ただ、戦い抜くのみだ。」 |
| 鍾会 | 「どこまでも……強情な男よ。何が貴様をそうさせる?」 |
| トウ艾 | 「私はかつて、一つとなった天下を見たい……その思いで戦ってきた。」 |
| 鍾会 | 「フッ、かなわぬ夢だ。」 |
| トウ艾 | 「そのとおりだ。だが……死ぬ前に成さねばならんことができた。」 |
| 鍾会 | 「何だ?命乞いでもする気か?」 |
| トウ艾 | 「貴様の野望など知らず、ただ国のために戦い、その命を散らしていった…… 数多の兵の無念を救うため!この命と引き換えに貴様を討つ!!」 |
| 鍾会 | 「くっ、何と言う抵抗だ……!このままでは……」 |
| 姜維 | 「やはりトウ艾は強い。ここは退こう。」 |
| 鍾会 | 「ぐっ……俺は奴の不意をついたはずだ!それでも……それでも俺はトウ艾に勝てんのか……!!」 |
| トウ艾 | 「敵の攻撃が緩んだ。今しかない……逃げよ、羊コ!」 |
| 羊コ | 「何を言っているのです!トウ艾殿を置いて逃げるなど……」 |
| トウ艾 | 「いや、私はもうここまでだ。」 |
| 羊コ | 「トウ艾殿、その傷は……!」 |
| トウ艾 | 「我が天命は尽きたようだ。だが羊コ、お前にはまだ先がある。逃げろ。」 |
| 羊コ | 「その命令は聞けません!私もあなたと共に最後まで……」 |
| トウ艾 | 「お前まで死ねば、誰が天下を一つにできるというのだ。俺の夢を託せるのは…… 羊コ、お前だ。」 |
| 羊コ | 「と、トウ艾殿!」 |
| トウ艾 | 「さらばだ、羊コよ。」 |
| 羊コ | 「トウ艾殿ーーー!」 |
| 鍾会 | 「ここに俺のための新たな国を建てる!魏も呉も飲み込んでくれよう!」 |
| 羊コ | 「もはや残るは呉のみ!蜀を倒した余勢を駆って一気に侵攻すべきです!」 |
| 司馬昭 | 「羊コよ、そう慌てても仕方あるまい。 呉の内情は腐りきっていると聞く。我らが攻めずとも、いずれ自滅しよう。」 |
| 杜預 | 「いや、それはそうかもしれませんが……このままでは……」 |
| 羊コ | 「蜀と戦い、命を散らした者たちは皆……わが国による天下統一を思い戦ったのです! そのことを考え、どうか!私が指揮官となりましょう!」 |
| 司馬昭 | 「……私の考えは変わらない。話はこれまでだ。」 |
| 杜預 | 「羊コ殿にしては珍しいですね。あんなに熱くなるとは……」 |
| 羊コ | 「天下は一つになるべきものです。トウ艾殿がかつてそういっておられました……」 |
| 杜預 | 「天下を一つに、ですか。なるほど……」 |
| 羊コ | 「感心している場合ではないでしょう。あなたの役目かもしれませんよ。」 |
| 杜預 | 「……俺の?そんな役を担うことはないと思いますが……」 |