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戦後日本のコンドラチェフ波動の正体
〜 その人口動態論的および資本論的説明 〜
(030925修正/040522修正)
図、戦後日本のコンドラチェフ波動

【1】コンドラチェフ波動とは
コンドラチエフ波動とは約50〜60年で循環する歴史的な最長期波動のことである。
この波動の終期に位置する変曲点近傍で、恐慌、戦争、革命等の歴史的構造変動、人間社会の相転移が生ずる。
経済指標としては物価や生産量などの長期的変動として過去に幾度も観測されている。
【2】従来の議論
このように経験的な事実としてこの歴史的長波は、その存在が知られているにもかかわらず、その生成メカニズムは依然として謎のままである。
最も主流の仮説理論としてはシュンペーターの「企業家精神による創造的破壊理論(技術革新仮説)」であり、これは「企業化精神あふれる天才企業家が降臨し、技術革新が加速することで”創造的破壊”が起こる」というものである。しかし、何故50〜60年サイクルで天才企業家が降臨し時代を画する技術革新が生じるのかは説明されない。
この「アニマル・スピリットあふれる企業家降臨論」は、主流派経済学(新古典派経済学)ことにサプライ・サイダーズ、ネオコン経済学の提唱した「規制緩和論」「市場・競争原理論」の理論的根拠となっていることは周知のとおりである。
しかし、この「天才企業家の降臨による創造的破壊の理論」はあまりにも非科学的である。
ここでは、非平衡統計力学(カオス複雑系統計物理)的な視点を取り入れ、個体群生物学的、すなわち人口動態論的(=世代周期を有する生命としての人間統計集団の時間的ふるまい)な観測と分析およびマルクス産業循環論における「資本蓄積(生産能力蓄積)のオーバーシュート理論」という複数の波動を結合することによって戦後日本の50〜60年大波を説明する。
(ここで、非平衡統計力学(カオス複雑系統計物理)的な分析とは、異なった変動周期を有する複数種類の統計集団の相互作用構造として不規則な周期運動を持つ個体群動態を捉えるということである)
【3】戦後日本のコンドラチェフ波動
ここでは、第二次世界大戦が終結した1945年の2年後の47年から2010年頃までの約63年を戦後の日本経済におけるコンドラチエフ波動とする。
この長期波動周期を以下のような時代に分割する。(図参照)
1、47年〜54年 =戦後混乱期
2、55年〜73年 =高度成長期(インフレの時代・・・資本蓄積と生活個体の増大の時代=生活及び生産資源需要の増大)
3、73年〜85年 =スタグフレーション期(内需減少とインフレの時代)
4、86年〜91年 =バブル期(内需回復と過剰投資・投機経済の時代・・・生活実態から解離したマネーゲームの時代)
5、91年〜97年 =過剰資本蓄積・金融不況期(回収不能資本の顕在化、内需堅調、価格破壊・財務悪化の時代)
6、97年〜2010年=デフレ・スパイラル期(生活個体の減少による消費力の減少・内需減少、全般的不況の時代)
図をみるとわかるように、これらの時代区分は結婚適齢女子人口の変曲点と同期している。
この適齢女子人口は生計独立人口(労働生産主体と消費主体としての生活個体群)を指標する統計集団の変動である。
女子の戦後の初婚平均年齢は長期平均概ね24歳である。時代が進むにつれて晩婚少子化しているのは周知のとおり。
資本主義の発展に伴い、急激な都市化、都市部への人口集積、過密化によって、人々の生活は不安定化、競争化し社会の生活抵抗(生活のしづらさ、家計維持費の増大、資金繰りの逼迫)は増大する。殊に、住宅難(子育て環境に適した十分な居住環境の確保の困難性の増大)、子育て・教育費の増大が家計を圧迫し、義務的貯蓄を増大させ、消費購買力を長期傾向的に抑制するとともに婚姻・出産のしずらさを増大させて晩婚少子を加速させる。(この現象はマルクス的人口論と矛盾し、より個体群生物学[生態学]と整合するマルサス人口論と一致する)
急激な工業化が進展した大正バブル期(昭和恐慌の前奏)にも晩婚少子が問題となったことは周知のとおり。これが、その後の「産めよ殖やせよ、お国の為に」の国策につながり、敗戦をへて現在の人類未曾有有の少子・高齢化社会進展につながっている。
今時、あるいは今後の長期経済衰退(政府赤字、不良債権など)はこの人口波動を基盤とするものである。
(厚生省人口問題審議会は1963年に、21世紀初頭における経済的混乱を予測し、政府に警告している)
結婚後2年後の26歳に第一子誕生。その2年後に第二子誕生、というのが戦後の女子のライフ・サイクルの平均的、典型的なものである。第1世代(昭和1ケタ〜団塊の世代)は出生率約4人の時代に出生した世代であり、この世代の出生率は半分の約2人、即ち第2世代の人口波は第1世代の約半分にまで低くなる。その次の世代は1989年の1.57ショックで有名なとおり1人代前半にまで減少し、その世代の波動の高さはさらに半分近くまで落ち込む。
上の女子ライフサイクルから初婚適齢もしくは生計独立人口波動の周期は25年((24+26)/2)の周期を持つ。しかも、時代が後方になるほど振幅は低くなる。
1954年に25歳の者は終戦時45年に16歳で、それ以前の世代は戦死者が多数であり、後の世代(多産報国〜戦後ベビーブーマー)即ち、30年生まれ
から戦後出生ブームの47年生まれまで人口は急増する。
この世代が成長し生計独立世代となって、生産労働力と消費購買力の急増を生み出した1955年〜73年が「軌跡の成長」と呼ばれた「高度成長期」にあたる。即ち、若い低賃金労働による生産力増大と生計独立に伴う基礎生活財、家庭用耐久財や住宅への短期集中的な需要増大が相乗的に経済回路内の資金回転(資金投下とその回収)を累積的に加速させた。
これが「投資が投資を呼ぶ軌跡の成長」の構造的メカニズムである。
<戦後の終焉から高度成長>
生計独立人口の急増は、家庭用耐久財および住宅需要を急増させ「投資が投資を呼ぶ」急速な資本蓄積を実現する。生産能力(労働力+資本蓄積)と消費購買力の車の両輪が同期し、商品交換および貨幣流通の高速回転を実現した。企業は多くの研究開発資金が投下可能となり技術革新も急速に進み、また、社会的購買力の強さが、「三種の神器」や「3C」を代表とする家庭用耐久財の急速な普及を可能にした。それは投下された資金が短期のうちに再び投下・蓄積可能なものとして回収され続けるということを意味する。
即ち、因果の順序として「天才企業家の技術革新」が「高度成長を生んだのではなく」、人口動態を物理的基礎とする労働力と資本蓄積(政策的には傾斜生産方式という計画的経済政策)と新世帯増加に伴う社会的購買力の同期が、企業の資金利用可能性を増大させ、技術革新機会を生み出し、高速の新商品普及を可能にしたのである。もちろん政府の公的資本形成即ち社会インフラの蓄積・高度化も、高い税収増加率に裏打ちされ、民間生産力蓄積を足元から支え加速させたことは言うまでもない。
経済の発展成長および高度化は、労働力人口の増大と資本蓄積の合成(積)による生産力増大によって起こる。即ち
経済力 =生産力 (=資本蓄積 x
労働力人口) x 消費力人口
であり、資本、労働および消費は互いに相補的であって、一つでも0となれば価値の継続的生産は実現しない。
経済システムは価値の流れの閉鎖回路であり、従って、生産力が高まっても社会全体としては、生産された商品が消費として販売実現しなければ経済回路の循環は持続しない。
消費経済力の増加率すなわち経済成長は、(ここで説明の簡単のために凵´og
として、要因の和として表現し)
経済成長率 =剏o済力 = 剋走{蓄積 + 劍J働力人口 + 剌チ費力人口
である。経済成長率が高いとは資金面からは、技術革新(生産力増殖率)の探索活動である研究開発への資金投下量を増大させ技術開発とその商品化を加速し、さらに消費力人口が継続増大していれば、その新製品の普及速度も社会的な購買力の増大として加速され、これらは相乗的に作用して高い経済の規模と高度化を結果する。
従って、上式にはさらに技術進歩率が加えられしかもそれは、経済成長率を比例変数とする関数である。つまり
経済成長率 =剏o済力 = 剋走{蓄積 + 劍J働力人口 + 剌チ費力人口 + 刹Z術進歩
ここで、 刹Z術進歩(t)
= F(経済成長率) :但し 刹Z術進歩/経済成長率>0
である。さらに、この方程式の各項のバランスが成長率を決定し、刮゚剰生産=剞カ産力−剌チ費力は安定成長の抵抗となる。よって
経済成長率 = (剞カ産力 + 剌チ費力 +刹Z術進歩) − a
x 刮゚剰生産 : 0< a =定数 <1
経済成長率 = {(剋走{蓄積 +劍J働力人口) + 剌チ費力 +刹Z術進歩}
−a
x{(剋走{蓄積 +劍J働力人口)−剌チ費力}
という関係になる。
今、労働価値説を想定し、しかも所得分配が平等に近ければ、金額ベースで、概ね社会総和の労働力(賃金所得)=社会総和の消費力(消費額)である。迂回生産の構造から社会総資本の投下額は、誰かの所得収入になる 理想的関係を想定して所得収入=賃金所得=消費額とすれば、
消費額の増加率 + 技術進歩率 = 投下総資本の増加率 + 利潤
というバランス式が出来上がる。ここで消費額の増加率を1で基準化すれば、
1 + 技術進歩率 = 投下総資本の増加率 + 利潤
となる。したがって均衡成長経路はマルクスが言ったように「資本蓄積速度(投下総資本の増加率)と価値増殖率(技術進歩率)の適正な比率」で決まる。
均衡成長率は資本蓄積率と技術進歩率との平衡状態で実現するが、技術進歩による生産効率増大自体が資本間競争を激化させて、 資本蓄積率 > 技術進歩率 の常態を生み出す。
すなわち競争資本主義では「資本蓄積の過剰、オーバーシュート」を結果する。
<高度成長の終焉とスタグフレーション>
戦後ベビーブーマーのピークである47年生まれの世代が初婚適齢平均にいたるのは72年である。
マルクス恐慌論および非線形統計力学(複雑系)におけるオーバーシュート論(過剰蓄積論)を参考にして説明すれば、既に、69年頃より資本蓄積は飽和過剰となっている。間接金融優位の中で企業の資金需要は頭打ちとなり、民間の設備投資への資金需要は金余り状態となる。これは銀行財務諸表の大企業向け貸出比率の減少傾向や他の金融統計から明確に観測できる。生計独立人口が減少に転じた73年に高度成長は終焉する。
内需は急速に減少。しかし世帯数は増大しており、日常的な基礎生活用品や生産力維持に直結する一次産品等の供給力の迅速な増大が不能な商品の価格は高騰を続ける。また、過剰流動による投機資金が土地や一次産品を押し上げるさらなる要因となる。また工業製品価格も、生活費賃金による原価高騰により同期して高騰。ここに、不況下の狂乱物価、いわゆる「スタグフレーション」が発生する。これは、第2世代の生計独立人口が上昇反転し、内需の回復がおこる85年ごろまで続く。
<バブルと金融不況、小売・住宅堅調の時代>
85年以降、金余り、過剰蓄積にあった企業は市場競争の中さらに過剰蓄積をオーバーシュートさせるとともに金融・不動産投機を活発化させて回収不能資金の蓄積(不良債権の蓄積)を加速させる。この背景には81年の銀行貸出総量規制の廃止、商法改正による直接金融の強化、外為法改正などの金融の規制緩和があったことは周知のとおりである。
90年株価暴落、バブルの終焉。91年春には戦後2番目の長期好況も終焉し、リゾート開発他、衣食住に関わりの無い資本投下の回収不能性が顕在化、大量の不良債権の蓄積が社会問題化する。
その一方で小売や住宅等、人々の生活に密着した分野は生計独立人口の上昇を背景に堅調に推移した。
<デフレ・スパイラルの時代>
97年団塊Jrが生計独立世代となり、以後急速に世帯数の伸びは減少、社会総和的な消費購買力は減速。大型企業の倒産が相次ぐ金融恐慌となる。過剰蓄積と内需激減による消費不況によって物価・賃金は累進的に下落、失業率は増大の一途を続け戦後最大を更新し続ける。
この世帯数増加の低迷による長期停滞は第3世代の生計独立世代が上昇に反転する2010年頃迄続くと見込まれる。しかも、少子化も戦後最悪を更新し続けており、強い力で消費購買力の改善を生じさせるとは予測できない。
<結 論>
以上のとおり、約50〜60年の長期経済波動とは女子の生物学的出生サイクルの25年と資本の蓄積過剰の波動が重ね合わされたものであると結論できる。
経済がそもそも人間という生物の集団的・共同的な生活組織であることを考えれば当然といえよう。
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